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睡眠時間は一時間。仮眠程度で十分だ。悠長に寝ている暇などない。自分の身を守れるのは自分だけなのだから。
壁に背を凭れかけながら天井を見上げる。灰色のコンクリート天井がやけに寒々しい。まるで自分の心中を表しているような、そんな様子が妙に腹立たしくて視線を畳に向けた。
夜の帳が近付いている。朱に染まった空が窓から見える。陽が西の空へと消えていく様は僕の心に深い影を落とす。空と同じく、夜の訪れは僕の心が闇に染まるのと同義だ。今宵もまた心を満たす為に歩き出すのだ。憎悪と血に塗れた黒い暗い道を。
後悔は無い。悲しみも無い。あるのは憎しみだけ。なのに何故だろうか。一歩一歩、確かに自分の望みに近付いているのに、近付けば近付く程大きくなるこの満たされない気持ちは。
その日僕は薄汚い四畳半の部屋で声を押し殺して泣いた。
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