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【同日 正午 駅周辺】
「このへんかな……」
ヨレヨレのYシャツに色あせたジーンズ、この肌寒い季節に上着すら持たずに歩く、眠たそうな目つきの青年がふいに立ち止まる。
青年はそのまま草むらを掻き分けて、何かを探している。
「おっと、見つけた」
青年はそう言うと、周囲の草を引きちぎって視界を確保する。
「えーっと……お地蔵さん? 僕の声が聞こえるかい?」
突然、足元の地蔵に向かって話し掛ける。
時間帯が夜であれば「酔っ払い」で済まされるが、昼間となればただの変人である。
幸いにも周辺に人気は無いのだが……
『その微妙にムカつく声……山之内? あたしよ! 鈴石綾乃よ! ねぇ、どうなってるの!? 助けて!』
山之内と呼ばれた青年の頭に、直接響く女性の声。
「あちゃー……やっぱり学生が被害者だったか。急に大学に向かってくる強い霊気を感じたから、もしやと思ったら……」
そう言うと山之内はポケットからスカーフを1枚取り出し、地蔵の首に巻いてあげる。
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