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峰ヶ丘学園高等部には一学年AからSまでの十クラスが存在する。と言えば、中一程度の学力さえあればおかしな点に気づくことが出来るだろう。
そうSクラスの存在だ。アルファベット順に並んでいる中で唯一異質なこのSは、隣席の中原曰わく『凄い馬鹿』の頭文字を取っているのだそうだ。……さて、一番馬鹿なのが誰か解ったところで状況整理を行うことにしよう。
現在、放課後のSクラスに俺と有坂はいる。
下校時刻から一時間以上が過ぎた午後五時を回ったところだ。当然、クラスメートの姿は皆無だった。
にも関わらず、見知らぬ女子生徒と男子生徒が教卓の前に陣取っていた。
「自己紹介な」
「はぁ?」
何やら不可思議な光景と状況に思わず疑問符が口からこぼれた。
これは俺の知能指数が低いからなのか?
ゴスロリ衣装を纏った娘がロケット花火を持っている理由を、誰か教えてくれ。
「これは仲村七海、美少女担当だ」
危なっかしい付属品については一切触れなかった。湿気ていることを祈りつつ、小さく頭を下げておいた。
「これは長谷川昴、美少年担当ね」
「どうも」
中性的な顔が定例的な挨拶を吐いて微笑を浮かべる。確かに美少年ではあるが、担当の意味が全く解らない。
そもそもこれは何の集まりなんだ?
「そしてオレが有坂チロル。美女兼副リーダー担当」
慎ましい胸を存分に張って、情報量の乏しい自己紹介は終了したのだった。
「名前しか解らなかったな」
プラスマイナスで言うのならばマイナスだ。疑問が増殖してしまった。
「十分だろ? 他に何を望むんだよオマエは」
「これが何の集まりなのかとか」
「革命軍」
……頭が痛い。人間というのはどうやら、理解不能な場面に出くわすと頭痛が発動するようになっているらしい。
「……それは置いといて。あの二人は? 勿論名前以外で」
その振りに真っ先に反応したのは仲村というゴスロリ服の少女だった。ロケット花火を新体操のクラブのように器用に振り回し、こう言った。
「魔法使いだっ」
「魔法使い?」
「……な、気がする。もしくはそうなりたいかなーって」
そんな夢を語られても、俺にプラスはない。解ったことといえば、彼女が少々電波っぽいということだけだ。
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