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「きゅうによびだしたりしてすみませんね、かすが」
「いえ、そのような事は御座いません、謙信様」
かすがの言葉を聞いて謙信は薄く微笑みゆっくりと口を開く。
「きょうはおまえにたのみがあるのです」
「頼みですか?」
かすがの言葉に謙信は頷く。
そして、再び口を開き
「ちかごろ、とよとみのきょういがとうごくにまでせまっているとききます。
かれらのしんぐんのそくどはおそろしいほどはやい。
たいさくをうたねばなりません…。
そこでとよとみがどのあたりまでしんぐんしているかしらべてきてくれますか?」
とかすがに告げた。
謙信の話を聞いていてかすがは少し考えた。
豊臣の脅威が迫ってきていると風の噂で聞いた事がある。
西国はほぼ豊臣に掌握され、残るのは東国のみとなっている今対策を打たねば確実に豊臣に落とされる。
それだけは絶対に避けねばならないと考えかすがは口を開いて言った。
「謙信様、かすがにお任せ下さい。調べて参ります」
「そういってくれるとおもっていましたよ、わたくしのつるぎ。
・・・くれぐれもきをつけるのですよ」
「はっ!」
そう言い終えたかすがはフッと姿を消し西国に向けて発った。
かすがが消えた後、謙信は少し不安そうに言葉を漏らす。
「とよとみにはすごうでのしのびがやとわれたという・・・。
びしゃもんてんよ、わたくしのうつくしきつるぎにごかごを・・・」
そう呟いて謙信は毘沙門天に祈りを捧げた。
かすがの無事を祈って。
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