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「ふーん…」
杏子はそれ以上反論しようとはせず、風花をジロジロと見遣った。
「今度は何?」
「…風ちゃん見てると飽きないわ」
「ありがと」
「褒めた訳じゃないって」
「そりゃ、どーも」
「…ねえ、風ちゃん。前から聞きたいと思ってたんだけど」
「なぁに?」
「前世の記憶、信じてるんだよね?」
風花は当然、杏子にも前世の話をしていた。
杏子は真っ向から否定することはなく、かと言って全面的に信用する風でもなく、淡々と受け止めているようだった。
「もちろん。ていうか、覚えてるんだけどね」
「でもハルは覚えてないんでしょう? それって、風ちゃん的にはどうなの? 納得出来るの?」
「納得出来るかって言われちゃうと困るなぁ…」
風花は頭をポリポリと掻く。
「私だったらやだな。だって、前世で彼氏を守るために命を捨てたわけでしょ、彼氏の愛を信じて。なのに生まれ変わったら忘れちゃった、なんてがっかりだわ」
「そりゃあ私だって、やっぱり陽斗には思い出してほしいよ。でもいいんだ、今のままでも」
「どうして?」
「陽斗と出会えたから」
「……」
「前世からの運命の恋人と再会出来るなんて、すごい奇跡だと思わない? それだけでも私、十分幸せ」
「風ちゃん…」
「これ以上望んだら、罰が当たっちゃうよ」
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