幕間 風花の一日

24/31
103人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
「あなたたちおしゃべりもいいけど、もう遅いからいい加減寝なさい」 「はぁーい」 風花は慌てて、への字口の杏子を促し自室に引き揚げる。 「…うるさいおばさんね」 パジャマに着替えながら杏子が不満げに言う。 「たはは…。一応私のお姉ちゃんだから、あんまり悪口言わないで」 「ふん。ああいう管理者づらした人は嫌い。風ちゃんのお姉さんだから口きかないだけで済ましてるのよ。でなきゃ、今ごろガンガン言ってやるところだわ」 「たはは…」 風花は病院での二人の言い争いを思い出す。 あれを家でやられたら堪らないが、今なら由梨が相手にしないだろうとは思う。 風花は杏子がベッドに収まったのを見届けると、車椅子を脇に片付け自分が寝る布団を敷く。 そして、ブタのぬいぐるみの『ハルトン』を抱いて布団に潜り込む。 「…よっぽど嬉しかったのね」 風花の様子を見て杏子が呆れたように言う。 「何が?」 「ハルトンよ。風ちゃん、ぬいぐるみならいっぱい持ってるのに、毎晩ハルトンばっか抱いて寝てる」 「だって、陽斗に初めてもらったプレゼントだもんっ」 「プレゼント…って、クレーンゲームの景品じゃないの」 「それでも嬉しいのっ。杏子ちゃんも峻太郎さんにプレゼントもらえば分かるよ」
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!