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「あなたたちおしゃべりもいいけど、もう遅いからいい加減寝なさい」
「はぁーい」
風花は慌てて、への字口の杏子を促し自室に引き揚げる。
「…うるさいおばさんね」
パジャマに着替えながら杏子が不満げに言う。
「たはは…。一応私のお姉ちゃんだから、あんまり悪口言わないで」
「ふん。ああいう管理者づらした人は嫌い。風ちゃんのお姉さんだから口きかないだけで済ましてるのよ。でなきゃ、今ごろガンガン言ってやるところだわ」
「たはは…」
風花は病院での二人の言い争いを思い出す。
あれを家でやられたら堪らないが、今なら由梨が相手にしないだろうとは思う。
風花は杏子がベッドに収まったのを見届けると、車椅子を脇に片付け自分が寝る布団を敷く。
そして、ブタのぬいぐるみの『ハルトン』を抱いて布団に潜り込む。
「…よっぽど嬉しかったのね」
風花の様子を見て杏子が呆れたように言う。
「何が?」
「ハルトンよ。風ちゃん、ぬいぐるみならいっぱい持ってるのに、毎晩ハルトンばっか抱いて寝てる」
「だって、陽斗に初めてもらったプレゼントだもんっ」
「プレゼント…って、クレーンゲームの景品じゃないの」
「それでも嬉しいのっ。杏子ちゃんも峻太郎さんにプレゼントもらえば分かるよ」
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