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祓は、呆然と焔の去った方を見つめ続けていた。 そして、長い廊下から焔の背中が消えた途端、膝をついて座り込む。 「祓!! ……大丈夫?」 煌夜が直ぐ様駆け寄って、気遣うように声をかける。 そんな煌夜を見て、祓は自分が弱味を見せたことを恥じるように 「当たり前だ」 フイッと視線をそらして、1人でサッと起き上がる。 そして、当主に向き直った。 「焔の倒す妖は……どのくらいの強さですか」 “百鬼夜行とは比べ物にならない” そう焔は言った。 それは、焔にとってなのか? それとも……? 「レベルでいうと9だ」 「レベル9!?」 祓は、ギョッとして思わず大声を上げる。 ちなみに、十六夜家では妖のレベルを12段階に分けて考えている。 レベルが上がる程に数字が大きくなっていくのだ。 そして、決して焔の実力を疑うつもりはないのだが……。 「焔にはまだ早すぎます! まだ15なんですよ!!?それに……!」 それに、年齢以上に焔に決定的に足りないもの。 それは……経験だ。 「焔が今までに倒した最大レベルは6だったはずでしょう!! 9になると知能も上がる! あなたは焔を殺す気ですか!?」 「確かに死ぬだろうな。殺す気かと言われれば否定はするまい」 …………は? サラッと言われたその言葉に、祓は硬直する。 そんな祓に気付いてか気付かないでか……。 清は尚も続ける。 「レベル9程度で死ぬならば、それまでの陰陽師だったということ。 別段惜しむことも無い」 この人はっ……この人はどこまで……っ! 祓は、グッと拳を握り締めた。 「子供は、子供はあなたの道具なんかじゃない!!」 血を吐くような悲痛な声でそれだけを叫び、祓は煌夜すら振り替えることも無く、長い廊下に向かって走り出した。 ――――そして、後ろを必死についていく煌夜のその顔もまた……暗かった。
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