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「祓────祓っ!!」
煌夜はバッと祓の腕をつかんで、強引に自分の方へ向けた。
「祓、大丈夫だから。落ち着いて。ね?」
煌夜は小さい子にするように、ゆっくりと諭すような口調で話す。
「祓が辛いのは分かるから。
取り合えず落ち着いて。
さ?深呼吸」
スーハーと手本のように深呼吸してから、煌夜は祓をもう一度見る。
祓は、下を向いて必死に何かを耐えているようだった。
唇は血が出るほどに噛み締め、拳は白くなるほどに握られている。
当たり前だ。
……あんなのとはいえ、清は祓の血を分けた父親だ。
父親に道具扱いされて傷付かない子供なんて、いるはずが無い。
「ふ」
「決めた」
煌夜が声をかけようとすると、その声にかぶさるように、祓の決意を込めた声が響いた。
「……は?」
祓は、驚いた煌夜の声に苛立ったのか
「決めたんだよ。
俺が焔を死なせないって」
それくらい分かれよとでもいうような顔をする。
「…………」
いや、絶対無理。
煌夜はその言葉を呑み込んで、賢明にも無言を突き通す。
対する祓はどこかスッキリとした表情だ。
どうやら自分の考えがお気に召したらしい。
「そうと決まればすぐに準備するぞ!
煌夜、早く来い!」
現金な祓を見ながらも、煌夜はフッと顔に笑みが浮かぶのを止められない。
祓がそれでいいんならいいか。
なんの臆面も無くそう思うと、煌夜は
「今行く!」
祓に向かって駆け出した。
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