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時は平成。
この世には、鬼が溢れていた。
唯人の目には映ることのない鬼────
それは、この世に歪みを生み出した。
病気や……最悪の場合には、死。
体にその闇を受けた者は徐々にその抵抗力を無くし、やがて鬼に食われた。
そして、その侵食を防ぐものは無いと思われたその時────
光が、現れた。
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「───滅!」
一際大きい声がその言葉を紡いだ瞬間、目の前から煙と土埃が上がる。
そして、そこに風が舞い───
やがて、何も無くなった。
そこに
「おつかれ」
何とものんびりとした声が上がる。
と。
声をかけられた人影は、声の主をキッと睨み付けた。
「何休んでるんだ!
お前も戦え!」
人影は、声の主に文句を言うと
「疲れた」
ムスッとした表情のまま、地面にあぐらをかいて座り込む。
声の主はちょっと困った顔をすると、だってさと話し出す。
「小物だった上に、手伝おうとしたら 祓い終わってたんだって」
しかし人影は、更に侮然とした表情になって
「だったら俺が祓う前に手伝え」
かなり無茶な要求をする。
その祓う前にするのが無理なのである。
「だから……もういいや」
声の主も反論しようととはせずに口をつぐむ。
そしてその代わりに
「……もう帰ろっか」
それだけを言い、ゆっくりと歩き出した。
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