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話は、焔が4歳の頃に遡る。
――――――――――――――――――――
「祓兄!!」
背中に重みがかかって、祓はガクンと前屈みになる。
4歳になったばかりの焔が、背中に飛び乗って来たのだ。
「焔」
祓は背中にいる小さな弟の名前を呼ぶ。
しかし、降りろとは言わない。
この頃はまだ、この2人は仲が悪くなかった。
いや――――かなり仲が良かった。
「ねぇ祓兄。符の書き方おしえて!」
焔は祓の服の裾を引っ張って、真っ白の符を祓の前に差し出す。
「貸して」
祓も文句を言うことはせずに、手を出して焔から符を受けとる。
「ここをこうして…ここに自分の好きな祓魔の言の葉を入れるんだ」
その頃。もうすでに陰陽師としての頭角を表し初めていた祓は、傍目にも分かるほどの強い符を焔にはいと渡す。
自分が優れているという自覚はまだ無かった。
だから、使用人達が自分を見て期待のような尊敬のような視線を向けていることも、当然知らなかった。
「ありがとう!」
焔もその頃は素直で、毎日祓にベッタリくっついていた。
「僕も祓兄みたいな立派な陰陽師になるからね!!」
エッヘンと胸を張って、焔は祓にニコッと笑いかける。
「よしよし。最近は何を倒したんだ?」
「一人でレベル1を倒したんだよ!!」
撫でられた頭を嬉しそうに触りながら、焔は得意気に話す。
“誉めて 誉めて”
とそのひた向きな目が訴えていた。
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