第八夜

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「ところで稔麿。」 「なに?」 「お前は何度言ったら分かるんだ? 『宮部』じゃなくて、『宮部さん』だろう!」 桂の小言が始まった。 僕は肩を竦めて、片耳を押さえた。 「ちゃんと聞け! お前は誰でも彼でも呼び捨てにして…… 子供じゃないんだから、いい加減に敬語を覚えろ!」 こういうときは、さっさと退散するに限る。 聞き流しながら、出入口に向かう。 だけど、どうしても一言いいたくて、振り返った。 「ねぇ、知ってる? 敬語って、敬っている相手に使うための言葉なんだよ。」 分かった?桂。 って続けて、慌てて逃げれば、桂の怒鳴り声が響いていた。 全く五月蝿いおっさんだ。
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