第二夜

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「ふぅん。じゃあ、結局江戸には行かなくていいんだ。」 同志でもある桂小五郎から話を聞いたのは、お瀧のところから出て一刻程あとの事だった。 藩命で幕府宛ての嘆願書を預かり、江戸へ向かう途中、京の都に寄っただけのつもりが、将軍・家茂が大阪に来るという情報が入ったらしく、足止め状態になった。 本当は、一刻も早くという状況なのだが、すれ違っては意味がない。 今ごろ、高杉はどうしているだろう。 高杉晋作という、唯一無二の友。 彼は、政変で長州藩が追放されたことに憤りを感じていた多くの志士らの京都進発の主張を説得したが止められず、脱藩してしまったのだ。 桂の説得で帰郷したが、その罪で投獄された。 僕らの師である吉田松陰も入獄した野山獄に。
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