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禿は、吉田様と酒を残し、去っていった。
「いらして、くれたんどすか」
緩む口元を隠して言う。
そんな私に気付いたのか、吉田様は笑った。
「お瀧、久しぶりだね。」
「お久しぶりどす。
………逢いとうございました。」
目を伏せてしまった。
こんな事を言うつもりは無かった。
反応が怖くて、顔が上げられない。
吉田様は何も言わない。
何の言葉もかけられず、どうしようもなく顔をあげると、吉田様は微笑んでいた。
「吉田様?」
「あぁ、ごめんね。
お瀧から、そんな可愛い台詞が聞けると思わなくて。」
そう言って、吉田様は私の体を包んだ。
吉田様の胸元に顔を埋め、私は泣いていた。
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