第三夜

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私は吉田様の事が好きなのだ。 飄々としており、掴みどころのないこの人が。 吉田様は、女朗としてではなく、ひとりの女で居させてくれる。 何度も夜を過ごしているのに、抱き締める以上の事をしない彼に、抱かれたいと思った。 理由なんて無い。 こんな気持ちになるのは、初めてだった。 泣き止んだ私は、恥ずかしさから顔を上げられずにいた。 そんな私に気付いているらしい吉田様は、咽の奥で笑っている。 それでも顔を上げずにいると、そのまま躰が倒された。 髪が乱れないように、丁寧に簪を抜き取られる。 吉田様の長い筋張った指をぼんやりと眺めていた。 「うん。君には此方のほうが似合うよ。」 私の頭には、飴色の簪がさされていた。 吉田様からの贈り物だと気付くのに、少しかかる。 「…何故?」 戸惑い問えば、彼は困ったように笑った。
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