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そんなことを聞かれても困る。
女子に簪を贈るなど、惚れている以外にどんな理由があるのか、逆に聞きたい。
先日、情報屋の古高と話した際、つい余計なことを聞いてしまった。
男ばかりが集まれば、やはり女の話にもなるのだ。
古高は得意気に遊女の話を披露していた。
彼の情報網はさまざまなところに張り巡らされているのだろう。
「吉田様も、女子に簪のひとつでも贈ってみてはいかがか?
京都の簪は素晴らしい。」
そんな戯れ言を真に受け、つい買ってしまった。
簪を懐に、急々とお瀧のところに来てしまう僕も、古高と変わらないなと苦笑が漏れる。
「お瀧は、何故だと思う?」
意地悪に聞き返した。
頬を紅く染める彼女のこんな表情は、僕だけのものだ。
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