第三夜

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お瀧を見ていると、僕にも人並みの幸せというものが掴めそうな気になるから困る。 それほど、お瀧は普通なのだ。 遊女特有の甘ったるい匂いもしない。 淡い石鹸と陽の香りがする。 飾り気のないその姿が、僕の心のどこかに、ぴたりとはまる。 夜を重ねる度に、僕を見つめる瞳が変化していくのが分かる。 逢うたびに、惹かれてゆく。 だから、お瀧の傍にいるといつも落ち着いていられる。 初めて人を斬って以降、こんなに心穏やかにいられたことがあっただろうか。 「お瀧」 名を呼べば、伏せていた瞳が震えながらこちらを向く。 僕は今、お瀧にはどう映っているのだろう。
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