第三夜

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目が覚めると彼女は既に起きていた。 僕を起こすまいと、体を固くしている。 「おはよう。 よく眠れた?」 耳元でわざと息を吹き掛けながら言うと、顔を真っ赤にして飛び起きた。 「お、おはようございます。」 笑いを堪えながら、袴に着替えていると、お瀧の視線が背に刺さる。 振り向かないように意識しながら着替え終え、襖に手を伸ばした。 「気いつけてお帰りください。 また、お待ちしております。」 深々と頭を下げているであろうお瀧を残し、襖を閉めた。 短い会瀬の刻を終える合図。 京の街を足早に、長州藩邸に向かった。
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