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「・・・これを」
寡黙な新八様は、羽織を脱ぎながら小箱を差し出してきた。
彼は、毎回土産持参でやってくる。
「いつも、おおきに。」
受け取りそれを開けると、美しい菓子が入っていた。
「美味しそうどすなぁ。」
菓子箱から顔をあげ、振り向こうとした瞬間、私の肩に温もりが降りてきた。
新八様の腕は筋肉質で、吉田様のそれとは違う。
無性に悲しくなるなんて、間違っている。
分かっていても、吉田様のぬくもりを想った。
いつの間にか組み敷かれた私は、新八様の肩越しに薄暗い天井をみていた。
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