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果てたあとの新八様は、今日も優しい。
吉田様を想う気持ちに偽りなどひとつも無いのに、新八様に優しくされると切ない。
まぶたを閉じたまま肩で息をする新八様を、そっと盗み見た。
「どうした?」
気配で分かるのか、まぶたを閉じたまま尋ねられた。
新八様の左腕は私の首の下を通り、その手のひらは乱れた髪の毛を一束弄んでいる。
神経の通っていないはずの髪の毛が、ひどくこそばゆい。
「いえ・・・」
「不思議か?
俺が此処に来ることが。」
新八様の左手が、動きを止めた。
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