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新八様の考えていることが、分からない。
吉田様がいらしてくれていることは、知らないのだろうか。
「どうだろう?」
新八様の真剣な眼差しに、私の胸は少し傷んだ。
だが、流されたくはない。
私にとって、吉田様以外に何度も夜を重ねる相手など、必要ない。
優しくしてくれて、ありがとう。
暖かい腕を、ありがとう。
そう思いながら、新八様を見つめた。
「もう、来んといてください。
うち、同じ方と何度も肌を重ねるの、好きやないんどす。」
何度か口に出したことのある台詞を、感情を込めずに言った。
新八様の瞳のなかに、地味な遊女がいる。
新八様は、答えない。
ひどく傷付いた彼の表情に、胸が少し傷んだ。
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