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もう十日、お瀧に逢っていない。
京にいるのにお瀧に逢えないのは、先日街で見掛けた新撰組のせいだ。
新八と呼ばれていた男は、風貌からして、新撰組副長助勤の男だろうと、古高が言っていた。
そんな男が、お瀧を見付けてしまった。
僕だけが知っていた彼女。
あの男はもう彼女を抱いたのだろうか。
藩邸の狭苦しい部屋に居ると、余計なことばかりかんがえてしまう。
抱いたのだろうか、など、愚問だ。
お瀧は遊女で、あの男は客なのだから。
僕が彼女を抱かないことの意味や理由など、あの男にも彼女にも関係のないことなのに、無性に悔しかった。
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