第四夜

9/12

436人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
もう十日、お瀧に逢っていない。 京にいるのにお瀧に逢えないのは、先日街で見掛けた新撰組のせいだ。 新八と呼ばれていた男は、風貌からして、新撰組副長助勤の男だろうと、古高が言っていた。 そんな男が、お瀧を見付けてしまった。 僕だけが知っていた彼女。 あの男はもう彼女を抱いたのだろうか。 藩邸の狭苦しい部屋に居ると、余計なことばかりかんがえてしまう。 抱いたのだろうか、など、愚問だ。 お瀧は遊女で、あの男は客なのだから。 僕が彼女を抱かないことの意味や理由など、あの男にも彼女にも関係のないことなのに、無性に悔しかった。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

436人が本棚に入れています
本棚に追加