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女将から解放されたのは、陽が昇ってからしばらくたってからだった。
客が帰るときに、見られてはいけないからだろう。
濡れた襦袢を引き摺り私室にもどると、襖の向こうから声を掛けられた。
入室を許可すると、幼い禿が赤い瞳で入ってきた。
「お瀧ねぇさん」
「なんどす?
あ、濡れた襦袢、乾かしておいて…」
「うち、謝りませんから」
瞳一杯に涙をためながら、それでも禿は私を睨み付けながら言った。
「そう。
襦袢、頼みましたえ。」
特に何を言えば良いかも分からず、愛想の無い返事を返した。
「…何でですか?
何で、永倉様にあんなことを!」
とうとう溢してしまった涙も拭わず、禿は言った。
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