第五夜

6/13

436人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
女将から解放されたのは、陽が昇ってからしばらくたってからだった。 客が帰るときに、見られてはいけないからだろう。 濡れた襦袢を引き摺り私室にもどると、襖の向こうから声を掛けられた。 入室を許可すると、幼い禿が赤い瞳で入ってきた。 「お瀧ねぇさん」 「なんどす? あ、濡れた襦袢、乾かしておいて…」 「うち、謝りませんから」 瞳一杯に涙をためながら、それでも禿は私を睨み付けながら言った。 「そう。 襦袢、頼みましたえ。」 特に何を言えば良いかも分からず、愛想の無い返事を返した。 「…何でですか? 何で、永倉様にあんなことを!」 とうとう溢してしまった涙も拭わず、禿は言った。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

436人が本棚に入れています
本棚に追加