436人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
「ほんまに何でもないんです。
私が粗相しただけで。
ただの罰なん……」
お瀧の瞳から零れた涙に、僕はそっと口付けた。
誰も、誰にもお瀧を傷付けさせたくない。
まだ、唇に口付ける勇気は無いけれど、抱かなくても十分彼女に溺れていることを思い知った。
「ねぇ、お瀧。
一緒に逃げようか?」
思わずこんな台詞が口から飛び出すほどに。
「…え?は?
な、何を?」
動揺を絵に書いたようなお瀧の反応に、僕は続けた。
「もとより追われる身。
ここから君を奪って逃げても、何も変わらないよ。」
覚悟など、とおの昔に出来ている。
その覚悟に、お瀧一人いれることに問題はない。
彼女の抱えるものが何なのか分からなくても、僕の決意は揺るがないと思った。
最初のコメントを投稿しよう!