第五夜

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「ほんまに何でもないんです。 私が粗相しただけで。 ただの罰なん……」 お瀧の瞳から零れた涙に、僕はそっと口付けた。 誰も、誰にもお瀧を傷付けさせたくない。 まだ、唇に口付ける勇気は無いけれど、抱かなくても十分彼女に溺れていることを思い知った。 「ねぇ、お瀧。 一緒に逃げようか?」 思わずこんな台詞が口から飛び出すほどに。 「…え?は? な、何を?」 動揺を絵に書いたようなお瀧の反応に、僕は続けた。 「もとより追われる身。 ここから君を奪って逃げても、何も変わらないよ。」 覚悟など、とおの昔に出来ている。 その覚悟に、お瀧一人いれることに問題はない。 彼女の抱えるものが何なのか分からなくても、僕の決意は揺るがないと思った。
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