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深夜にも関わらず、僕は情報屋の古高のところに顔を出した。
古高は、京では枡屋喜右衛門という偽名を名乗り、古道具や馬具を扱い生活している。
裏の顔は、長州間者だ。
狭い出入口を身を屈めて入り声をかけると、上にあがって来いと声がした。
急な階段を上り、行灯の明かりが漏れる部屋へ入ると、同志である、宮部、有吉がいた。
宮部は、八月十八日の政変以降、早くから京へ潜伏していた。
今、僕たちがたてている計画の中心人物だ。
彼は松陰先生の友人でもあり、桂同様、未だに僕を子供扱いする人間のひとりだ。
有吉は、僕と同じく松陰先生の元で学んでいた学友で、弟分。
可愛がってやっているのは僕なのに、高杉にばかり懐く、変なやつだ。
「どうした?こんな時間に。
お気に入りに、袖にでもされたか?」
大きな手で僕の頭をぐしゃぐしゃっとして、宮部は笑った。
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