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禿が居なくなった。
新撰組の男が私を訪ねてきた日の夕刻、女将に呼ばれた私は、そこで初めてあの禿が帰ってこないことを知らされた。
何か知らないかと尋ねられたが、私が知るはずもない。
誰とも馴れ合わず生きてきたことは、女将が一番よく知っているので、しつこく聞かれることもなかった。
「しばらくは、違う禿でええどすな。」
それだけで、終わった。
だけど、誰とも親しくしてはいなくても、やはり自分に付いていた禿の足抜けは、良い気はしない。
間違いなく見付かるだろうし、その後どうなるかは目に見えている。
子供が一人で抜けられるほど、この世界は甘くはない。
ため息を吐きながら、部屋へ戻った。
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