第八夜

3/15

436人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
禿が居なくなった。 新撰組の男が私を訪ねてきた日の夕刻、女将に呼ばれた私は、そこで初めてあの禿が帰ってこないことを知らされた。 何か知らないかと尋ねられたが、私が知るはずもない。 誰とも馴れ合わず生きてきたことは、女将が一番よく知っているので、しつこく聞かれることもなかった。 「しばらくは、違う禿でええどすな。」 それだけで、終わった。 だけど、誰とも親しくしてはいなくても、やはり自分に付いていた禿の足抜けは、良い気はしない。 間違いなく見付かるだろうし、その後どうなるかは目に見えている。 子供が一人で抜けられるほど、この世界は甘くはない。 ため息を吐きながら、部屋へ戻った。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

436人が本棚に入れています
本棚に追加