わからない君

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「先生?彼女寝ちゃってますよ?」 1人の看護婦が先生にコーヒーを出しながら報告する。 「まぁ、いいでしょ。彼女も疲れてるんだ。」 すると外からバタバタと走ってくる音が聞こえる。 バンッと激しくドアが開いた。 あの女の子だ。 「せっ先生!彼が起きました!!」 さっき涙を流してたのが嘘のような笑顔だ。 「そうかい。今から行くからね~、病院内は走っちゃダメだよ、はっはっはっ」 恥ずかしそうに彼女は微笑んだ。 病室に入ると、彼は起き上がってキョロキョロしていた。 私を少し見た後、後ろにいる彼女を見た。 しかし彼はなにも話さない。 普通なら、呼んできてくれてありがとう。の会話ぐらいがでるはずだ。 彼は彼女を覚えていない。 さっき、恥ずかしそうに微笑む彼女を見て、私は、彼が彼女のことを覚えていたのだなと思った。 彼女は私が思っている以上に強い、いや、無理をしている。 そう悟った。
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