わからない君

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病室を出た。 「無理をしちゃダメだよ。」 先生は私に言った。 また、涙が出てきた。 涙腺がおかしくなってしまったらしい。 先生は私に慰めの言葉をかけ、奥にいった。 あまり、なにを言っているのか理解できなかったが、遅いから帰りなさいと言われたことだけはわかった。 白井に電話をかけると、すぐに来た。 家に帰り、部屋に閉じ籠る。 なにもいらない。 なにも食べられない。 布団を被る。 一生私のことを思い出してくれないんじゃないか。 もう一生口も聞けないんじゃないか。 もう一生近くにいれないんじゃないか。 嫌なことばかりが、頭に浮かぶ。 「なんで、私が、ヒック、あんなやつに泣かされなきゃ、いけない、のよ。あんなやつ知らない……知らないよ……」 「ウゥ……早く、思い出してよ……う、うぅ、うえぇぇん、ヒック、ウゥ、敦……ヒック」
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