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「ありがとうございました。
またお越し下さいませ。」
客が背中を向ければ、条件反射のごとく出てくる言葉。
感情込めて言ってたのは、研修期間始まって一週間弱だったかな。
もう今は流れ作業。
店長すまん。
「いらっしゃいませ、お預かり致します。」
エノモト マヒル
俺は榎本真午、現在高校二年生。
県内ではわりと有名な私立高校に通う傍ら、こうしてパン屋でアルバイトをしている。
「カレーパンが一点、チーズ&トマトサンドが一点、メロンパンが一点。
お会計三点で480円で御座います。」
「すみません…あのブロックの食パン、一斤分を6枚切りで頂きたいんですけど…」
「かしこまりました。6枚切りを、一斤分ですね。」
「はい」
「只今スライスして参りますので、少々お待ち下さい。」
こんなことも日常茶飯事。
最初はスライサーを押さえる加減が上手くいかず食パンを無駄にしてばかりいたが、1ヶ月も経てばパンナイフでも均等に切れるまでになっていた。
「ありがとうございました。
またお越し下さいませ。」
右手にハンドバッグ、左手に歪に膨らんだ袋を持って、足取りも軽く自動ドアを抜ける年若い婦人。
その柔らかい背中を見送って、俺の長い1日は今日も終わりを告げる。
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