後悔(プロローグ)

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 先日、妻を伴い水戸の偕楽園へと紅梅見物に赴いたが、春の訪れは未だ感じる事が出来ないでいる。まして夜明けには、いささかの猶予がある時間だった。  革の手袋を嵌めてはいるが、手の甲には痛みにも似た感覚が走る。下履きを履いてはいるが、どうにもスラックスは冷気を通す。上半身は重ね着した上にコートを羽織っていたので良しとするが、首元から顔にかけては堪えきれぬほどの寒さが凍みてくる。それでも、還暦祝いにと、孫の恵美からプレゼントされた手編みのマフラーが、それを和わらいでくれていた。
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