王様

1/4
前へ
/181ページ
次へ

王様

小学生の頃、僕の父親はバナナと牛乳で構成されていた。 毎朝新鮮なバナナが王宮へ運ばれ、父親は牛乳の海でそれをかっ食らうのだった。宮女たちは父親の鼻毛を切り、父親の咥える煙草に火をつける。 いつしか父親は国中を巻き込んだ巨大樹となった。僕はうっかり父親の根っこにからまってしまった。 そのまま僕は17歳になった。 初恋の子は牛乳アレルギーだった。 ああ、神よ。僕は父の国にはもういません。なのにどうして僕の心臓には今も尚、父の根がはられているのか。 赤い湿疹がオリオン座を象った。 彼女と僕の逃避行。はて、牛乳の海に終焉はあるのか?
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加