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「うん……うん……これからもずっと……一緒に居ようね……絶対……絶対だからね……!」
(ふふふ、良かった)
そう言った彼女は満面の笑みを浮かべていた……気がする。
「……よし! 気持ちを切り替えるために、やるべきことをしないとね」
私は目尻に溜まった涙を拭う。
(やるべきこと?)
「まずは警察に電話。それから、あなたを直さなきゃね!」
思い立ったら吉日。私は警察に緊急の電話をする。
とりあえず『部屋に押し入ってきた泥棒に襲われて刺されそうになった!』……と、当たらずしも遠からずの内容を告げた。
深夜にも関わらず、急いで来てくれるとのこと。
さてと、これから事情聴取されることになるだろうから……。
「警察が来るまでに傷跡直しちゃうからじっとしててね~」
(むぅ~……私、人形だから動けないんだけど?)
「あはは、そうだったね。それじゃ、少し我慢しててね?」
私は裁縫箱を引っ張り出して、裂かれた部分を縫い合わせ、彼女を元の姿に縫い直していった。
パチン。
「ふぅ~。完了~」
(ありがとう。綺麗に直ったみたい)
「がんばったんだもん。当然でしょ~」
私と人形は共に笑い、起きてきたお母さんに『うるさい! 早く寝なさい!』と怒られた。
泥棒とこの子が繰り広げていた攻防では起きなかったのに……納得いかないなぁ。
そんなことを考えていると、先程連絡した警察が到着。早々に事情聴取となる。
突然のことにお母さんは勿論、起き出してきたお父さんもすごく驚いていた。
私の話を聞き、部屋を調べ、銀色のナイフを回収した後、警官達は帰って行った。
警察って、いつもこんな感じで捜査しているのだろうか? それとも、深夜だから改めて明日来るのだろうか?
などと、お母さん達の質問攻めを受けながらそう思った私だった。
私にとって修羅場だった一夜が明けた翌日。あの子が消えていた。
あの後、隣に寝かせてあったはずなのに、朝起きたら見当たらない。
寝相が悪くてベッドから落っこちたのだろうか?
でも、探したけど見付からない。
その後、部屋中くまなく探した。ベッドの下から押し入れの中まで徹底的に。
けれど、あの子を見つけることは出来なかった。
「もしかして、昨日のことは全部夢だったとか……」
ガチャ。
「まだ準備出来てなかったの?」
「お母さん……」
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