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「不満、なんて、そんなことあるはずな……、じゃ、なくて、アディっ!」
あんまりからかうと旅についてこないと言い兼ねないので、仕方なく笑って否定してやる。
「オーサーは大切な弟よ、村長。
今までも、これからもそれは変わらない」
「ふーん、そうか。
気が変わったらいつでも言えよ」
「はい」
冗談交じりではあったけれど、これは養父なりの優しさだと私は気づいていた。
もしも、系統がこのまま分からないのだとしても、ここが私の居場所なのだと言っているのだ。
首都までの道のりは子供だけで楽に旅ができるほど平坦ではない。
だけど問題はそこではなく、神官が言ったように「女神の眷属」である場合、だ。
もしも大神殿でそうとされてしまえば、私は村へ戻るどころか、二度と大神殿から出ることはできなくなるだろう。
予想がつくから今まで私は行かなかったし、私に誰も勧めなかった。
「明日には出発するんだろう。
夜には送別会するからな、今のうちに休んでおけよ」
今夜は徹夜で飲むぞと宣言し、旅に備えて休めと勧める養父の好意に甘え、私は与えられている自室へと戻った。
小さな家だが、マリベルの出てきた戸口から入って直ぐ、広い室内が広がる。
外から見たのとは違って、室内全部を木で組み上げてある様子の見える家の中は、外よりもひんやりと涼しい。
広い一階は団欒の場所としているリビングで、大人の男が十人も入ればいっぱいになる程度の広さだ。
今のところ、真ん中には四人分の日々の食事を置くには少し狭い、丈の高いテーブルが陣取っている。
壁際にそのテーブルにちょうどよい高さの椅子が積み上げてあるのは、食事時以外に使わないからだ。
入口右手の木の板を積み上げた階段を上って、私は二階へと上がる。
階段を上ってすぐのドアがオーサーの部屋で、隣が私の部屋だ。
ドアは単に上から布をかけてあるだけなので、私はそれを片手で避けて、室内へと足を踏み入れる。
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