2#よくいる家族

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「不満、なんて、そんなことあるはずな……、じゃ、なくて、アディっ!」  あんまりからかうと旅についてこないと言い兼ねないので、仕方なく笑って否定してやる。 「オーサーは大切な弟よ、村長。  今までも、これからもそれは変わらない」 「ふーん、そうか。  気が変わったらいつでも言えよ」 「はい」  冗談交じりではあったけれど、これは養父なりの優しさだと私は気づいていた。  もしも、系統がこのまま分からないのだとしても、ここが私の居場所なのだと言っているのだ。  首都までの道のりは子供だけで楽に旅ができるほど平坦ではない。  だけど問題はそこではなく、神官が言ったように「女神の眷属」である場合、だ。  もしも大神殿でそうとされてしまえば、私は村へ戻るどころか、二度と大神殿から出ることはできなくなるだろう。  予想がつくから今まで私は行かなかったし、私に誰も勧めなかった。 「明日には出発するんだろう。  夜には送別会するからな、今のうちに休んでおけよ」  今夜は徹夜で飲むぞと宣言し、旅に備えて休めと勧める養父の好意に甘え、私は与えられている自室へと戻った。  小さな家だが、マリベルの出てきた戸口から入って直ぐ、広い室内が広がる。  外から見たのとは違って、室内全部を木で組み上げてある様子の見える家の中は、外よりもひんやりと涼しい。  広い一階は団欒の場所としているリビングで、大人の男が十人も入ればいっぱいになる程度の広さだ。  今のところ、真ん中には四人分の日々の食事を置くには少し狭い、丈の高いテーブルが陣取っている。  壁際にそのテーブルにちょうどよい高さの椅子が積み上げてあるのは、食事時以外に使わないからだ。  入口右手の木の板を積み上げた階段を上って、私は二階へと上がる。  階段を上ってすぐのドアがオーサーの部屋で、隣が私の部屋だ。  ドアは単に上から布をかけてあるだけなので、私はそれを片手で避けて、室内へと足を踏み入れる。
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