1#よくある幕開け

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 目の前で光と風が爆ぜる音を聞いて、私は目を開いた。  まず視界に入るのは白い一繋ぎの服を着て、白い帽子を被った二十歳前後とみられる金髪の青年で、彼は右手で左手を押さえ、苦悶の表情を浮かべている。  外傷は見当たらないが、今の音からして、小さな雷にでも打たれたのだろうか。 「系統診断(ルーティスト)、失敗?」  彼の向こう側は山で切り出した岩を積み上げただけの壁で、崩れないのが不思議なくらいだ。  その上、その間を四角く切り取ろうだなんて、作った人は正気の沙汰じゃない。  その切り取った場所から吹き込んでくる風に吹かれて、かすかに流れ落ちた砂から、この建物の相当な古さが伺える。  嘘か本当か女神が立てたのだと言われている。 「すいません、アデュラリアさん」 「いいよ、わかってたし」  私が落胆もなく労いの言葉をかけると、彼――名前を知らないので青年神官としておこう――は見た目七、八歳程度には年下に見えるはずの私に怒ることも無く、苦笑を返してきた。  彼の目にはおそらく私はこんな風に映っているだろう。  十三歳ぐらいの小生意気な子供、と。  格好こそいつも一緒にいる幼なじみの男の子と変わらないような短パンに黄色のシャツとなめした皮のベストだが、今日は普段と違って髪を二つに結っているので、ちゃんと女の子と認識されているかもしれない。  そうでもしなければ男の子に間違われることも少なくない私の実際の年齢は十六で、ここでは既に成人したとみなされている。 「アディ、その言い方は無いよ」  隣に来た幼なじみの男の子――オーソクレーズが私を嗜める。  アディというのは私の愛称で、口を少しだけ曲げて振り返った先では、洗いたての白シャツに土色の茶色いズボンを黒と灰色のサスペンダーで吊った、短い金髪で黒い目の少年がいる。  黒目といってもよくよく覗いてみれば、光の加減で碧の虹彩が入っている少し特徴的な少年だ。  歳相応に十五に見られるのが、私としてはとても羨ましい。  本名はオーソクレーズだが、呼びにくいので私はオーサーと呼んでいる。
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