3#よくある見送り

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 隠してるけど、かなり涙もろいのだと聞いた後で、不謹慎だけどオーサーと二人で噴出してしまった。  だって、あのヨシュだ。  いつも私たちをからかって遊んでて、余裕に見える「あの」ヨシュが。  しかたないなとオーサーと二人で餞別をバッグにつっこみ、荷物を担ぎなおす。  といって、ふたりとも互いに背中に軽く背負える程度だから、一キログラムもないだろう。 「じゃあ行くね、マリ母さん」 「ええ」 「おい、俺には何もなしか?」  それはないだろうと名残惜しそうなウォルフを見て、それからオーサーを見る。  オーサーは深くため息をついている。 「父さん」 「おまえはいいんだよ、オーサー」  これはもう言わないとダメだろうけど、呼ぶとオーサーはまた拗ねるのだろうか。  少し伺いみると、呼んでやってくれと目で言われてしまった。  真っ直ぐにウォルフに向き直る。  とても期待した目を直視して、私は今にも羞恥で逃げ出したいのを堪えて、マリベルを真似て、ゆっくりと微笑んだ。 「行ってきます、お父さん」  言ってから直ぐに彼らに背を向け、足早に村の外へ向かう。  追いかけてくるオーサーの足音よりも遠くから、ウォルフが吼えるように咽び泣く声と宥めるマリベルの優しい声を聞きながら、私はなおも歩く速度を速めた。  止まったら、たぶん私が泣くと思った。  それはそれだけ二人の存在が私の中で大きいということの現われで。  追いついてきたオーサーが気遣う言葉に何も返さず、そのまま村を抜けるために森へと足を踏み入れたのだった。
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