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旅に出るからと言って、いつも通っている道がいつもと違って見えるなんてことは全くなく。
私とオーサーが村から出て直ぐの森の中は、普段とさして変わらない薄暗い木漏れ日の下にある。
道らしい道があるわけではないので、ほとんど獣道のような場所を目印を目当てに進むのが普通だが、二人とも歩きなれているだけに目印を見もせずに、小枝を踏み折りながら進む。
程なくして、行き止まりのように塞がれた藪があったが、躊躇せずに二人ともが通り抜けると急に視界が開けた。
目の前には人の手で舗装された道があり、どちらも近くの町へと続いている。
舗装されているといっても地面はむき出しの土で、ところどころに取り除かれないままの石が埋まっていることが、少し見ただけでもわかる。
そうして道に沿うように木々が避けているため、光が道を照らし、舗装されていると感じるのだ。
「っ」
思い出したように頭痛が再発し、私は立ち止まって、両目を閉じて米神を押さえる。
「大丈夫、アディ?」
心配そうにオーサーに問われたが、その声さえも頭痛を増幅させるようで、私はそのまま左手の道へと足を踏み出した。
真っ直ぐ進んでもいいが、あちらは少しだけ遠回りになると知っているからだ。
その分、こちらは多少道が細くなったり、薄暗い場所もあったりするが。
足を進める私を気遣うようにオーサーは足音を静かにしてついてくる。
「そんなに辛いなら、出発を延期したら?」
だが、その声も頭の中で反響し、ぐらぐらと脳を揺さぶられる気持ち悪さを起こす。
せっかくマリベルが酔い覚ましを飲ませてくれたのに、全然効いていないみたいだ。
「う、耳元で怒鳴らないで……っ」
「怒鳴ってないよ」
オーサーの返答がなんなのか分からないが、呆れていることだけは確かだろう。
空気がそう告げているのだ。
だが、あの送別会の状況で私に断れるわけが無い。
止めなかったオーサーにだって、責はあるはずだと心の中で八つ当たりしつつ、私は足を進める。
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