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後ろからは、傷だらけだが少し日焼けた白い肌と暗緑色の短い髪なのがわかるだけで、表情までは見えないが何故か楽しそうにしている気がする。
手にしているのは両手で扱う大剣だろうか。
白マントの男が黒装束から私たちを守ってくれている、というのはわかる。
だが如何せん、私は二日酔いで頭が痛い。
「ガンガンガンガン煩いのよーっ!」
私はとりあえず地面の土を掴めるだけ削り取ると、そのまま黒装束目掛けて投げつけた。
砂ではないが多少の攻撃となったのか、驚いた二人の男が止まり、私を見る。
私はとにかく音の発信源から離れたくて、オーサーの手を強く掴んで、早足で歩き出す。
「さっさと行くわよ」
「ちょ……いいの?」
戸惑うオーサーを引きずり、大体二十歩程度離れた場所で足を止めて、蹲る。
地面が揺れている気がするのは、絶対のさっきの金属音のせいだ。
「アディ、大丈夫?」
「大丈夫なわけないじゃないっ。
なんなの、あれっ」
「僕に聞かれても」
「聞いてるんじゃないよ。
文句を言ってるのっ」
「……僕に言われても」
オーサーに当たったところで、頭痛が収まるわけも無く。
理不尽な怒りを口に出さずに八つ当たりしていると知らないオーサーは、何か思いついたように自分の荷物を漁りだす。
それから、少しも経たないうちに地面を軽く踏みしめる音がして、私たちに大きな影がかかった。
見上げるほどの体格というのは、こういうことを言うのかと過ぎったが、よく考えたら私は座っているからだ。
それにそんなものはウォルフで見慣れている。
「あんたら、護衛雇う気はねぇか?」
目の前に来た男は、開口一番にこう言った。
私はとにかく頭が痛いので、半分八つ当たり気味に怒鳴り返す。
「煩いわよ。
頭に響くんだからっつってんでしょうが!」
半眼で涙を浮かべたまま睨みつけても威力は無いらしく、男は眩しいぐらいに明るい笑顔を浮かべている。
目の前にしてみると分かるのが、さっきまでは見えなかった小さめの陽に透けた緑の葉の色をした明るい瞳だ。
その瞳に多分のからかいが含まれていると気が付いたのは、ヨシュと同じように見えたからだ。
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