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「前に来た神官様だって言ってたじゃないか。
三歳以上の系統診断(ルーティスト)は大神殿の神官様でもなければ成功しないって」
「そりゃあそうなんだけどさ~」
わかっているけれどと口を尖らせる私を宥めるように頭を撫でようとする少年の腕をやんわりと跳ね除ける。
一つだけとはいえ年下のくせに、時々こうして私を子ども扱いする行動が私は好きじゃない。
私の子分のくせに生意気な、と以前に言ったら、笑いながらごめんと謝ってはくれた。
だが、一向に改善してくれる気は無いようだ。
「その歳まで系統診断(ルーティスト)を受けていないなんて、珍しいですね」
会話に割り込んできた神官の言葉に、オーサーとの雑談をぴたりとやめる。
「かつて、この世界は女神に創られ、支配されていました」
神官の口から綴られるそれはよく知るもので、創世記一章一節に書かれている有名な文言だ。
「かつて、この世界は女神に創られ、支配されていた。
女神による永い統治の間、世界は穏やかな楽園のようであり、そこではすべてのものが話をし、聞くことができた。
渇くことも、飢えることも知らないその時代はまさに楽園であり、全ての物が女神を愛し、仕えることを至上の喜びとしていた。
誰も、世界の一切が永遠に続くと信じていた幸福な時間は、ただひとつの無情な召喚により破られた。
天上人である女神らを召喚したのは、それができるのは空間を統べる王、唯一の天帝である。
女神らは自分たちの作った愛しき世界を護るため、ただひとりの幼い女神を地上に遺し、さっていった」
世界は女神が去った日から輪廻を繰り返し、いつか女神が還る日を待ち望んでいると伝えられている。
故に繰り返される輪廻の中、己が何者であるかを見失わないために、前世――つまり己の系統(ルーツ)を知らなければならない。
それがこの世界を支える女神信仰の役目となっているため、系統(ルーツ)によって戸籍を神殿に登録することは、至極当たり前のことなのだ。
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