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たとえ私が女神に関わるものだとしても、この幼なじみは隣で変わらずに支えてくれるだろう。
口にしたように、たとえ私が世界の果てまで逃げても、共にいてくれるだろう。
だけど、逃げて逃げて逃げ続けても、この世界で逃げ切れる場所は無い。
オーサーと手を繋いだまま私はディを顧みる。
最初に黒装束に襲われてからここに来るまでで、幾度か私とオーサーは彼に助けられた。
背中の大剣を抜くまでも無く、彼は軽口を叩きながら、敵を退けてくれた。
私と目が合うと、楽しそうに微笑む。
真意は見えないが、悪い人ではないのだろう。
いい人かどうかは分からないが、少なくとも今は敵じゃない。
だから別にいても構わないとオーサーと話していたら、少し離れて歩いていたディは笑っていたようだ。
「今夜は町に入らないで野宿する」
命を狙われているのはともかく、それで他の人間に怪我をさせるわけにいかない。
そういうと、ディは賢明な判断だと如何にもな様子で肯き、にかりと歯を見せて笑った。
日が暮れる前に私達は森の中へ少し戻り、三人が火を囲める程度の木々の間でキャンプの準備を終えることができた。
夕食はオーサーがマリベルから預けられていたサンドイッチを三人で食べて、闇に落ちた森の中でただじっと焚火を囲んだ。
「刻龍ってのは犯罪のエリート集団だ。
殺しから、誘拐、強盗、犯罪のプロ集団が揃ってる。
もちろん、魔法使いや剣術使いもいるし、今の棟梁は魔法剣士らしいな」
ディは軽い口調で、私たちを襲ってくる黒装束についての説明をしてくれる。
彼の目は静かに私たち、というよりも私を見つめている。
深い森と同じ色の瞳は直視するには深すぎて、私は見ないようにただじっと焚火の赤を見ていた。
「ディさんは、」
「ディでいい。
堅っ苦しいのは慣れねぇ」
オーサーが敬称をつけると苦笑しつつ、訂正し、先を促す。
「ディは魔法剣士?剣術使い?」
「いや、ただの剣術士だ」
これは二人にしてみれば意外な言葉だった。
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