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要は使えればいいんだと割り切っていたが、どうやら戦闘の終わらない一端を担っていたのはその拳銃らしい。
もちろん私だって、使わずにすむのならそうしている。
だが、使わなければいけない理由がちゃんとあるのだ。
「げっ」
森の奥を見たディが歯がみし、オーサーが呻き声をあげる。
奥からは倒しても倒しても狼の群れが現れてくるのだ。
これが一晩中続けば嫌気も差す。
「ここにこんなに獣が出るなんて知らなかったなぁ、僕」
「あの馬鹿が呼び寄せてるに決まってるでしょ、オーサー。
さっさとあいつを吹き飛ばしてよ」
「できるならとっくにやってるよっ」
私が拳銃という飛び道具を使っている理由は二百メートル程度離れた場所に、木立で笛を吹き続けている黒衣の男――敵がいるからに他ならない。
本当ならディにそこまで行って倒してもらいたいところだが、頼みの剣術士はかねてより私たちをつけ狙っていた別の男の相手で忙しいようだ。
「ちっ、二人とも使えないわね」
「おまえが言うなよ」
切り結びながらもつっこみ返してくるあたり余裕があるのかと思いきや、どうにもディの手は空かなそうだ。
徹夜で戦闘していて眠いし、いい加減布団で眠りたい私としてもは、我慢の限界を超えた不機嫌を隠す気力も無い。
普段なら止め役のオーサーも自分のことで手一杯ということは、だ。
「こうなったら、ファラの力を頼るしかないようね」
「最初からそうしてよ」
オーサーが背中越しに安堵の息を吐くのに、私は小さく笑いを零した。
こちらを見る余裕もないディをちら見し、私は願いの言葉を口にする。
「テキニココ、ファラ」
呼ぶ言葉に決まった形はなく、重要なのは願いの強さだ。
願いの相手を思い浮かべ、私は彼を思い出して、堪えきれずにまた笑った。
私が呼ぶ声に合わせ、一枚の木の葉が手の上に落ちてくる。
その上には全長十センチにも満たない少年が乗っている。
「どうしていっつも、ぴんち、になるまで呼んでくれないですかーっ」
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