7#よくある馬車

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 ミゼットは私とオーサーが属するルクレシア公国の中でも辺境に位置する小さな町だ。  辺境とはいえ多国と隣接するのが山向こうの海だけなので、比較的平和な地域と言える。  首都から隣国と隣接しているヨンフェンという町の中継点に当たる為に小さいながらも宿場として栄えているのと、元は貴族領だったという事実もあり、ミゼットの町中で一番広い大通りは馬車が進めるぐらいに広くとられている。  それだけの広さの通りということもあって人通りも当然のように多く、その道沿いに並ぶ店はいつでも活気にあふれている。  小さくて平らな石を並べてならされた石畳を、人にぶつからないように歩くのは、私もオーサーも慣れたものだ。  何しろ、週一回はこの街に買出しに来るのが村で与えられている仕事なのだから、私にとってもオーサーにとっても慣れているのが当然と言えば当然といえる。  私たちがミゼットに入ることができたのは結局日がかなりのぼった昼に近い朝方で、流石に旅仕度を調えられるような店が開いていなかった。  夕べはろくな食事をとっていなかったことでもあるし、喫茶店で軽い朝食を済ませてから、私はオーサーと二人で店を巡ることになった。  それから、大神殿まで旅をするのに必要な食料や簡易な衣類、それぞれを買い終わったのが今の状況で、その間文句も言わず、人にぶつかることもなくディは私たちの後ろを着いてきている。 「あんたの札は相変わらず高いわよね。  あんなもん自分で書けばいいじゃない」  右手で抱えた食料の入った紙袋を抱え直しながら私がいうと、オーサーが不満そうに反論する。  札と言うのは、札士であるオーサーの武器だ。  オーサーは自分で札を書くことの出来ない札士であるため、定期的に購入する必要がある。 「自分で書いても効果はないんだって、アディも知ってるでしょ」  札に書いた文字が札士の言葉によって発動するには、魔法使いが魔法を使うのと同じく、それなりに基本的な才能が必要だ。  原理はよくわからないが、簡易術式さえ効果を成さない札士が、札に込めた魔力なら発動できると言うのは、私にとっても実に不思議な力だ。
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