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女神の眷属が「至宝」と云われる所以は、女神の力を行使する権限があると伝えられるからだ。
だからこそ、権力に固執するものたち――主に王侯貴族はその力を、存在を欲した。
まだこの村に来る前、私はイネスの神殿で系統診断(ルーティスト)を受け、そして失敗した。
それ以前から系統(ルーツ)がわからないということで誘拐にあったり、刺客に狙われたりしたことも度々あった。
それでもなんとか生き延びていたのだが、その日を境にそれらは激化した。
一緒にいた者たちはほとんどが巻き込まれて、死んでいった。
望んで身代わりになってくれた者もいれば、本当に運が悪かったとしかいえない者だっていた。
だけど、どれも自分が原因だったのは間違いなくて。
「あなた、馬鹿?」
握った手に力が篭ったためか、オーサーが不安そうに私を見る。
「この世界はとっくに女神に見捨てられているんだから、今更女神の眷属がいるわけないよ」
女神が作ったなんて、そんな伝承があるから、みんな殺された。
私が神殿で、系統診断(ルーティスト)なんかを受けたから、死ななくていい子供だって死んだんだ。
もしあの時に私に女神の力を使うことができたら、誰一人死なせやしなかった。
女神がいなくなって、既に千年以上の時間が経ってるっていうのに、今更誰も本当に女神が還るなんて信じてなんかいない。
私だって、とっくに女神が捨てた世界で、女神の眷属に揮える力なんてないって、ずっとそう思ってる。
誰も口に出さないけど、きっと誰もが思ってるんだ。
女神の力を信じて、欲しているのは権力に固執する愚か者だけだ。
神官の力は女神とは違う、この世界で生まれた魔法で。
魔法使い達が使う神官とは別の魔法だって、この世界に則したもので、女神の力なんて誰も必要としてない。
「それに、いたとしてもこんな場所にいるわけないじゃない。
私ぐらいに育ってたら、とっくにどこぞの王族か貴族にでも売られてるよ」
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