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外から差し込む昼の白い光に目を細めながら、私は片腕を上げて、それを遮る。
強く目の前を通り抜ける風が騒がしそうに私の髪を揺らして、駆け抜けてゆく。
ざぁという木々のさざめきに、箒で暗い気持ちを掃いてもらった気がした。
何度も、何度も問われてきた。
女神の眷属ではないのかと、何度問われても肯定するつもりはない。
ないのだが、そろそろ色々な意味で潮時なのかもしれない。
それに、否定することもだが、問われることそのものにも飽きた。
繋いでいた手を解き、二つに結っていた髪を解くと、耳元をすり抜けて、髪が後ろへさらりと流される。
黒く真っ直ぐで硬質な髪は、だがすぐにぺたんと背中におちついた感触を伝えてきた。
わしわしと片手で髪を掻き、はぁと息をついて立ち止まる。
「オーサー、決めたよ。
大神殿に行こう」
私が笑顔で振り返ると、オーサーは驚きに目を見開いた。
普段は憮然としているくせに、そうするとオーサーは少しだけ幼くなる。
闇に落ちる世界の寸前みたいな深い藍色の瞳に、私の少し緊張した笑顔が映っている。
「えっ、アディは行きたくないんじゃなかったの?」
「気が変わった。
どうせ、このままじゃ自由に旅も結婚もできやしないんだ。
大神官サマとやらに、系統(ルーツ)を決めてもらおうじゃないの」
他の国ではどうなのか知らないが、大神殿を有するこのルクレシア公国では、旅に出るにも所属している村や町からの許可がいるし、婚姻に関してもすべて神殿で登録すると決まっている。
そして、すべてのことには必ず系統(ルーツ)の診断書が必要で、これは個人の存在証明みたいなものだ。
私は通常それを持っていないので、村を出るだけでも私を証明してくれる者との同行が必須となっている。
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