私の咲君

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四月中頃の、転校初日。 家族の都合で引っ越してきた咲は、今日から通う筈の学校内の、大きな掲示板で立ちつくしていた。 ポカン、とした顔つきで。 口も半開きだった。 そんな咲を、沢山の好奇の目が見つめている。 それをぐるりと見渡した後、もう一度視線を掲示板に移す。 そこには、自分の顔がプリントされた紙が張り付けられており、でかでかと“私の咲君”と書いてあった。 咲が首を傾げた時、中学の時に一緒の学校だった優希(と彼のお供のクマのぬいぐるみ)と徹が、人ごみを掻き分けて傍にやって来た。 そして咲の肩にポンと手を置いた。
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