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寂れた電灯の元に辿り着くと、明日拓は立ち止まり青年に話し掛けた。
やはり顔立ちは端正で、肌はずっと屋内に居るからなのか、仄かに白い。しかし首もとから腕のすべてを隠すような無地の服に、足元まで伸びるズボンのせいで、素肌は九割近く見えない。
「変な寸劇に巻き込んでしまってすみませんでした。貴方を警官から離すにはあれしか思い浮かばなかった。迷惑であったら、本当に申し訳ないのだけれど…」
明日拓は青年の顔を伺う。何の反応も示さない。迷惑とも、感謝したいとも思っていない、そんな無表情。でも、彼が明日拓を探っているのは明らかだった。その目は鋭く、明日拓という人物が一体何なのかと言う事を少ない情報で処理している。
「えっと、貴方の自宅は何処でしょう、一人で帰れますか、随分遠くまで連れてきてしまったし、道が分からなくなってしまったなら僕も付き添います。」
彼は何も言わない。表情も無い。明日拓は彼に少しだけ恐怖を覚えた。どう接したらいいのか分からない。
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