第四章

3/9
前へ
/24ページ
次へ
       明日拓はクスリと笑うと、テェブルに鳥の入った籠を彼に良く見える様に置く。彼は興味津津で鳥を見詰めた。どうやら嫌いではないらしい。何より彼の表情を見られて嬉しい。 「わさびっていいます、可愛いでしょう、」 「ワ…サビ」 「ほら、言葉を話せるんですよ、片言だけど。歌も教えれば囀ります。すぐ忘れちゃうけど、」  そう補足する明日拓の言葉を聞いているのかは定かではない、が、彼がわさびを羨ましそうに見ているのは確かだった。  明日拓は言葉に詰まった。彼は全くと言っていいほど自分に関心を示さない。何を話していいのか分からない。そもそも彼が何者なのかも知らない。     
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加