第四章

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     『柚子』  顔と同じくらい端正な文字は、とても読みやすい。明日拓はそれを見て、声を出した。 「柚子、柚子と言うんですね」  頷く柚子は少しだけ気分が軽くなったように思えた。  明日拓は今までずっと会話出来なかった柚子と、このような形で会話できる事が嬉しくてたまらなくなった。同時に今まで気付けなくて申し訳ないという気持ちが湧き上がり少し反省した。 「えと…年齢、うーん、…18…とか、」 『残念 19』  クス、と笑った柚子は、舌を出した。こんなしぐさはまだ幼いとは思うけれど、随分大人びている。それに、彼の目は、人生の苦楽を十分味わってきた様な哀愁を孕んでいる。 『僕は21です』  明日拓は柚子の書いた文字の下にそう走り書きして、柚子に見せる。 「僕の方が、歳上ですね、柚子」 「………」  納得いかない様に口を噤んだ柚子は、次に不満そうな眼差しを明日拓に向けた。  それを笑顔で交わした明日拓は、今度は声で質問する。     
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