第四章

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      「大学とか、行ってたりするんですか」  柚子は首を横に振る。 「そう…、なら、僕と同じだ。僕も高校卒業してからすぐ就職したから。来年国家試験を受けます、」  感心した様に此方を伺う柚子が、明日拓はこの時だけ少し幼く見えた。 「柚子はなにが好きですか、」  自分の事を一つ言ったら、相手の事も一つ聞く。これは明日拓の初対面に対する決まりだ。  柚子は迷うことなく文字を書いた。 『本』 「へぇ、本か…暇が無くてなかなか読めないけど、好きです、僕も、」  そう言って、明日拓は急に活字を大量に読みたくなってきた。脇にあるテェブルに肩肘を付いて、どんなジャンルを読もうかと考え込む。頭はもう図書館だ。  それを見ていた柚子は、再び何かを書き出した。  明日拓はそっと覗きこむ。やっぱり彼の字は端正だなぁ、なんて思った。     
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