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たくさんの拍手が、私たちを包み込む。
ちょっぴり気恥ずかしくて、頭が一瞬下がる。
「こら、勿体ないぞ」
隣で、私と腕を組んだ父さんが言う。
「せっかく旦那がメイクしてくれたんだ。堂々と前向いて、歩かないとな」
…父さん。
昭が両親に挨拶するため、私の実家に来たとき。
父さんは驚いた顔を見せたものの、すぐに笑顔で結婚を認めてくれた。
拍子抜けするくらい、あっさりと、だ。
でも、私、聞いちゃったんだ。
その日の夜、普段タバコを吸うベランダで一人、涙を流していたこと。
母さんが、そっ…と隣に行くと、一言、
「…こういう、感じか」
って呟いて、また泣いていたことを。
父さんは、いつだって私のことを一番に考えてくれていた。
進路を決めたときも、一人暮らしをすると決めたときも、私のしたいようにさせてくれた。
今回だってそうだ。
自分の想いより、私の気持ちを最優先してくれた。
時に厳しく、
優しく、
私を愛してくれた、強くてたくましい、私の自慢の父親。
そんな父さんが、私は、
『大好きよ、父さん』
大好き。
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