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あるところに、父、母、祖母、娘という4人家族が住んでいた。父と母は若いときに結婚し娘を生んだ。しかし、どうしても男の子が欲しくて毎日がんばったのだが、なかなか子供はできなかった。半ばあきらめかけたころ、その願いが叶い、待望の男の子が産まれた。それはちょうど娘が高校生になるころだった。両親はとても喜び、毎日その男の子をかわいがっていた。赤ん坊はすくすく育っていったが、もうじき3歳になろうかという頃になっても、全く言葉をしゃべらなかった。心配になった母親は、毎日「ママでちゅよー、ママでちゅよー」と一生懸命話しかけた。そして3歳の誕生日を半年ほど過ぎたころ、ようやく「マー、マー」と母親を呼ぶように言葉を発した。その3日後だった。母親が原因不明の死を遂げた。母親の死後は祖母が男の子の面倒をみるようになったが、男の子は再び言葉を発しなくなっていた。祖母も母親同様、その子の将来が心配で、なんとかしゃべれるようにと毎日「バーバでちゅよー」と話しかけた。そうこうしてるうちに3ヶ月が過ぎた。相変わらず男の子は何も言葉を発しない。ところが、とうとう4ヶ月目に「バー、バー」とじゃべったのだった。
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