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とある県の山中、とある村に首無し地蔵と呼ばれる胴体だけの小さな地蔵がある。地蔵と言っても立派な彫刻が施されているわけではなく、そのへんの石を削った様なものである。しかしこの地蔵が恐ろしい事件を招いたという逸話が残っている。 ・・昭和30年代の話だ。そもそもこの地蔵は道行く人の安全を守る、道祖神の様な役割を担っていたらしい。
ところがある子供が悪戯か不注意で首を折ってしまった。
たぶん、その子にワルギは無かったのだろう。いけない事をしてしまったと思い、折れた地蔵の首を家に持って帰った。親に言って直して貰おうとしたのだ。しかしその子の父親は「何処からこんな物拾って来たんだ!気持ち悪い」と、その子の話も聞かず首を裏山へ投げ捨ててしまった。その子は幼い心にも罪悪感を持ちながらも、その日は眠りについた。月が天真に昇った頃ふと目が覚めた。何か足音がするのだ。 ペタ・・・ ペタ・・・
「何の足音だろう?」 ペタ・・・ ペタ・・・ だんだん家の方へ近づいて来る。その子は直感した「あのお地蔵さんだ。きっと僕の所に仕返しに来たんだ」 ペタ・・・ ペタ・・・止まった。
その子は布団に潜り込みガタガタ震えた。何分か経ち、恐る恐る顔を出してみると、「うわっ!」足元の先にまぎれもない昼間の地蔵が立っていて、こっちを見据えていたのだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・」何度も繰り返し謝った。すると地蔵はまた何処かへ歩いて行った。
翌朝起きてみると昨晩の事がまるで夢だった様な感覚がした。ふと横を見ると・・
「うわぁーっ!」 横で寝ていた父親が、頭を何回もねじられて死んでいた。地蔵はその子ではなく父親に仕返しに来ていたのだ。
その後、裏山で地蔵の首を探したが何処にも無かったという。
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